死んでいったレポーターのために/クリ
も次第に、喋ることさえ…」
恋するものの報道は他人には無用だ。
「私の左手が彼の右手に徐々に近づきます」
「言葉にこそ表わしませんが、彼は確かに私のことを…」
地方局のワイドショーで主婦20人がそれを見た
「離さないで、私が逃げてしまわないように」
「私の身体の奥まで彼がいっぱいに広がっております」
「もはや、この状況を皆さんにお伝え、うっ、うっ」
視聴者はチャンネルを変え、レポーターの死の瞬間は、
誰にも見られることはなかった。
レポーターよ、あなたはヒロインになれたのか?
あなたの甘い繰り言は、「心が痒い」というくだらなさ。
レポートよりあなたの盗撮ビデオが価値があるらしい。
彼女は報道の神どころか、ワイドショーの神にも見放された。
ましてやミューズが降りることは、一度もなかった。
死んでしまったレポーターに言えることがあるとすれば、
「無用の言葉の連なりが、天に召されますように」
Kuri, Kipple : 2000.12.02
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