死んでいったレポーターのために/クリ
死んでしまった者のためになることなど、あるはずもない。
彼女はそれを「報道」と信じた。
フジテレビのニュースがバラエティーであることも知らずに。
彼女は報道に命を捧げると告白した。
しかし報道の神は少年の真白き肢体しか好まなかった。
彼女の行為は無。
タイタニックの渦にのみ込まれながら、
彼女はライブで状況を説明しようとした。
溺れながら、皮膚を裂きながら、骨を折りながら。
「…鼻と言わず口と言わず耳からも、容赦なく海水が」
「現場の海域では海水温が華氏40度前後」
彼女を突き動かす衝動は何だろう?
「こちらにいらっしゃるのは科学者のケルヴィン卿です」
「私も次
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