遺書(ショート&ショート)/虹村 凌
 
日の朝に、サラリーマンが飛び込み自殺をするように、
苦悩や恐怖から逃れたい一心で、死を選ぶのだろう。
しかし私は、どん底にいる自分を、死で縛りたいとは思わない。
ならば、頂点でもどん底でも無い、真ん真ん中に居る時こそ、
死と云う選択肢を最も良く見られる状態では無いのか?
私はそう信じている。

私は此の世に生を受け、両親の元で21年間生き、
様々な人間に会い、刺激を受け、情報を遣り取りし、
仲間に出会い、裏切られ、愛し愛され、憎み憎まれ、
私は幸福で不幸な人生を歩んで来た。
全ての関係者や発生した事象に感謝している。




私はここで指と止めたいと思う。
指と止めた後取る行動は、云うまでも無いだろう。
最後まで読んでくれて、有難う。
また何時か会いましょう。
今世か、来世か判りませんが、また、会いましょう。

又、会いましょう。








私は絶望的な気持ちで、冷たい彼女の遺体を抱きしめた。
彼女の髪の薫りは、彼女直筆の遺書と同じ匂いがした。
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