遺書(ショート&ショート)/虹村 凌
私は、もう一時間もこうしてパソコンの前に座っている。
書こうか、書くのを止めようか、迷っている。
しかし既にこうして指を動かして居るという事は、
私自身の意志は書く事を選んだのである。
私の意志は、今、死に向かって動いている。
何故なのか私にはわからない。
金が無い。
バイトが決まらない。
稽古に出られない。
舞台に立てない。
雨が降っている。
昼飯が喰えない。
体中の筋が痛い。
理由を数えれば、誰かを殺す理由を見つけるように、
簡単に出てくるモノなのだと、今初めて気づいた。
私は将来が真っ暗な訳でも、華々しく輝く訳でもない。
今現在、不幸のどん底に居る訳で
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