やまびとの散文詩(四)/前田ふむふむ
 
やまびとの散文詩 断片12

わたしたち、やまびとが星々を汚した罪が
償われる日が訪れた。それは二百年の歳月を必要とした。
幾世代にわたる長い期間であった為に、
もはや悲願であった。
青い断崖を眺めて、歴史を書いていたやまびとが、
耐えて言えなかった言葉を話した。
∧山に帰ろう∨
わたしたちは、その言葉に溢れる涙を流して同意した。
この塩辛い海猫が舞う土地には、
始めから青い断崖は無く、
海びとたちの絶え間ない監視を受けて生きてきたことを
わたしたちは、誰もが十分に、知っていたのだ。
わたしたちは、偽りの青い断崖の麓の安住を捨てて
赤い砂塵が舞い踊る、約束されていない
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