親/さくらほ
一
父は
生まれた時から
わたしの父であった
母は二度の流産を経験していて
私の時もずいぶん危なかったらしい
わたしは
生まれる前から
強さと弱さを持っていた
父は私をお姫様のように愛し
呼び方は
「さくらほちゃんではいけない
さくらほちゃん様と呼ぼう」と
母を笑わせた
病気がちのわたしは
毎月
深夜の急患へゆく
母が言う
「この市の病院の夜間急患にはほとんど行ったね」
熱の塊のような私を母が胸に抱き
疲れた体の父が車を運転し
何も知らぬ私は
愛されていた
守られていた
弟が生まれた
二
いつ頃からか
わた
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