抽象的な愛/
蟻
その空間には慈悲深い静寂と
時間が意思を持って寝息を立てた
喉を鳴らす鳩の存在を確認する限り
現在は早朝だろう
運命だよと
そう寝言を囁いたのは時間で
ぼくはさながら飢えた草木のように
必死で根を場所につき立てた
それはそれは奥ふかく
それはそれはじんわりと肌を湿らせた
青空の梺には世界の果てがあり
そちらへノアは向かったのだと思う
きっと死にたかったのだと
そう考えている
もう意思を持たない静寂と時間が
自動車の音に連れ去られた
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