無題/.
 
比谷の公園へ行くにはどうすればいいのでしたっけ
お爺さん、知りはしませんか
もしかしたら僕は貴方が羨ましいのかも知れません


生乾きのシーツに似たにおい
それを受け加速する鉛の電車




青い光が差し込む2時半
忘れられたビニール傘はまだ旅を続けたがる

悪いけど僕はもう行くよ
コンクリートが乾くにおいは好きじゃない
嬉しさ以外の気持ちでいっぱいになる
あまり好きじゃないんだ、そういうのは


ゆっくりと気だるくドアから一歩踏み出すと
大きく口を開ける青空が待ち構えていた
思い出したように振り返り、老人に目をやる

白濁色の老人の左目に青い光が映り込んだ気がしたが
そのまま鉛の電車は重そうに車体を加速させた
男は何も思わずに駅を降りていった



辺りはもう夏の香りを漂わせている
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