思考停止。/葛西佑也
 
夏の気配と湿気とが
充満するこの部屋で、
私は思う
六月は麻痺している、と。
ベッドの上で横になっていると、
爪先や指先や腹筋、
恥骨までもが渇いた息吹に
やられてしまう。
どうしようもなく痺れている。

私にははっきりと
伝えたいことがあるのに、
声を発しようとすると、
横隔膜が邪魔をする。
もたもたしていると、
迫り来る水気が
すべてを流し去ってしまう
一刻の猶予もない
なのになのに、
私の下腹部では
大洪水の前の静けさが。

東から日が昇る頃、
私は西を向いて大きく息を吸い
西へ日が沈む頃、
私は東を向いて大きくため息をつく。
一日とはそう
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