指結び/霜天
 

例えよう


はぐれないように、はぐれられないように今日も
指結びしている
振り向くたびに
君は許されている
明日を見ない日には、このまま眠りたいと願って
ただ流れていくだけの夏に乗せて
君は明日の君のかたちを
スケッチブックに想像している


君の心を例え、よう


水晶玉(小さな、丸い)
夏、青空(暗い夕立前の)
渡る、草風(むせ返るくらいの)
夜降る、雨音(誰にも気付かれないほどに)
サイレント
夕暮れの小部屋
ひどく透明なもの
ひどく透明なもの

君の心を
消えてしまうとしても
消してしまうとしても
明日の朝に交わす言葉は
おはようと決めている


確かなこと、ありふれたこと
指結びする体温
ここに在る、こと




指結び、する
二人の行間
今傾いて、バスを待つ影を
何に、例えよう
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