書かれた−姉/音阿弥花三郎
 
墓地へ駆けてゆく
姉を二階の窓から見た
学校の制服を隠したのを
姉の埃臭い制服
血の付いた便器にしゃがんだ
汗のにじむ掌で鈍く赤い
姉の隠し持つ勾玉
汗のにじむ掌で鈍く赤い
血の付いた便器にしゃがんだ
姉の埃臭い制服
学校の制服を隠したのを
姉を二階の窓から見た
墓地へ駆けてゆく



縁側に濡れた足跡が続き
こどもはその跡を付けた。
夏の正午で庭と縁側は明暗を強めていた。
こどもは物置を覗いて、声を上げた。
突然目の前に白いものが立ちはだかった。
物置の窓を通過する光の中へ
姉の裸の背中が動いたのだ。
「行水よ」
背中を見せたまま姉は言った。
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