真夏の航海/前田ふむふむ
 
風に焼かれたひかりが、しわがれた午後を蔽い、
燦燦と隆起する曲線から彫りだされる、
涼やかな乾いた空は、
純情な顔をした新世紀の趨勢を、見せ付けている。
その顔をかしげた瞳孔の庭園のなかには、
過去の噴水から湧き出ている、
変わらない讃歌が、双方向に伸びて、
濃淡を極めた蛇行した抒情の束を、
滑らかに際立たせてゆく。

競りだした息吹を、深く励まして、
剥きあげた時の先端に、降りしきる熱狂の踝は、
走り続ける半島の痩せた草木を、
艶やかな立体の幾何学に浮かび上がらせている。
その楼閣の上を、飛べない空が、
突き刺さる雲の裂け目から
滴りおちて、わたしの脳裏のなかに流
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