遅れてきた青年/前田ふむふむ
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わたしの手は、荒廃する孤独者の感覚を
発信して、学び飽きた、
寒々とした砂漠に埋もれた世代を、粉々に砕いている。
だが、わたしには、喉を潤す自由は与えられているが、
渇きを癒す飲み込む水がない。
先を行く者たちの、
燃え尽くした青い夜会の残り火の囁き。
そのあとを、憧れとも、諦めとも付かぬ、
遅れてきた経験が、若い石棺の天蓋を、
流行の衣装を着て、すべり続けてゆく。
わたしは、この新しい王冠で飾られた時代の、
蒸し焼きの喜劇を、冷血な悲劇を、
なぞるように、ささやかに興じてみて、
うすい顔の自画像の愚かさを晒しているが、
滔々と湧き出る新生の噴水が固まる広場で、
滝のような叫びは、立ち止まることは無く、
届くこともない、遅れた前衛の顔を赤らめて、
受ける恩恵を渡されることは無く、
退廃を立ち上げて溶けつづける橋梁の上を、
淡々と泳ぎつづけるのだ。
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