遅れてきた青年/前田ふむふむ
 
終りのない雨が降り続く若い群島の
決して更新されない、
カレンダーに刻まれた記念日が忘れられる夜、
過去を映さない鏡のなかの燃え立つ暗闇を、
瞑目する叙事が、鈍い輝きを浮き立たせている。

遅れてくるわたしの座席は、すでに無く、
朽ち果てた足に支えられて佇立する、
わたしに与えられる場所の影が、
場所の無存在をしめして、
過去と名乗る白紙の色に染まる
単調な散文的な映像を、遡りながら虚ろに眺めている。

わたしの声は、渇いた壁に向かって、ひたすら、
梱包される言葉の欠片を、吐き出して、
意味が直立しない萎れた風俗を炙りながら、
濁り水のなかで時事をかき混ぜている。
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