宙に舞う女/凡
りむしろ興味津々で女を眺めていると
喉の奥が凍るような感触とともに女は本当に体ごと宙に舞ったのだった
はじめはゆらりと前方にからだが動いたかと思うと
今度は左右に揺さぶられながらどんどんからだが宙に浮いていくではないか
スカートの下から覗くシュミューズがやけに色っぽくなびいて
気づけば歩道橋の上まで舞い上がっていた
先ほどの喉の冷凍が溶けたのだろうか
俺の重い腰は自然と上がって喉の奥からするりと言葉が飛び出してきた
「おうい!気持ちいいか〜!」
なんと似合わない言葉なのだろう
しかし俺の心が望むものはこの延長線にしかなかったのだ
「 」
一瞬の静寂を経て俺が手に入れたのは薄汚れた人間の視線だけだった
乾いた視線たちに気を取られているうちにやはり女は消えていしまっていた
俺は足下に置いた小さなボストンバッグをぐっとつかむと
ぬるりと人混みをぬって逃げてしまった
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