忘却/砦希(ユキ)
 


「ぼくたちは
一言のことばを交わすたびに
一つずつ忘れていって
ゆうべ見た夢も
ゆうべ交わしたさいごの愛も
あなたを愛したということも
ひとつずつ
じわじわと忘れていって
忘れていくということすら
忘れてしまう
いつかぼくたちは
生きていることも忘れてしまうのかな
そう思うと少しこわいけれど
きっとこの恐怖 さえも
忘れてしまうんだ
だからぼくたちは
忘れることで幸福になれるんだね」

「そうかもしれない」



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