家族譜/音阿弥花三郎
 
縫っていく
それは真冬の布団の中での暖のとり方だ
翌朝兄は自転車に乗って
湿地帯を出ると姉に語った
姉は子どもをあやしながら聞いていた
姉は兄の言うことなど信じていない

闇の中で父は咳払いをした
これから兄を叱るつもりだ
しかしその結果をいつも恐れている

母の寝姿は覗かれていた 
母はゆっくりと起き上がり
台所へ行きアサリを煮た
見る間にアサリは口を開けた
アサリの身が肉をきわだたせ煮立っていた

姉は新たな家族をつくるために
湿地帯を出た
しかし父と母のつくった家族とそっくりの家族を
別の湿地帯につくるだけだ

兄はうつむいて女の跡を着けた
兄の
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