存在するフラット/霜天
 
否定するフラット
完璧な夜など無い
証明するための嘘もない
孤独と吼える路地裏にしても
足跡は君から四方へと走り続け
その手の指輪は誰との証明を残すだろう
完璧な夜など無い
一縷の隙も無く
寒さに震える夜など無い


確定するフラット
君の
小さく俯く後姿は
扉をくぐれば、また速くなる
その指先は誰を証明するだろう
完璧な一日など無い
この街も、誰も
憧れは空に、見上げて
歩き続けていく足跡だけで
何も見えない夜空など無い



君は
平面
君、の
眠りたい呼吸は
今も許されないらしい
俯いて僕に納まる背中の、細い
心音、は
何事も無く平らで
一度離せば落ちていきそうな
平面



そして
存在するフラット
波の無い夕暮れの海
完璧な夜はここにあるよ、と
深い空気に呼吸を細めて
平面、ざわめきも無い
今ゆっくりと目を閉じて
まだ証明されない誰かのために
祈っていると思うことにして
寒くはない
決して
寒くはない夜に


やがて揺れる、フラット
ここに足りないものがあるとすれば
戻る   Point(4)