矢文、我に放て/たりぽん(大理 奔)
今日死んだ太陽の
お仕着せな光を反転させて
月が夜を奪う偽物の夜
太陽を復活させる呪文
水晶を微電流で虐めて
僕たちも一緒に
ふるえる
言葉が聞きたかった
なのに
誰もが黙ったまま
矢文を放つ偽物の夜
風は体の中に吹くことはなく雨も
涙腺とは関係なく止んでしまった
世界に影のように張り付く
置き去りにされる実体
おう、と抜けば
痛みと血を引き替えに
君は手に入れる
放たれた言葉
新月に雲は沈んで
今日は月も死んだ本当の夜
ほんの微かに自分を
燃やして光る君を抱く
消え入りそうな
水晶の温もり
刻まれる時間に
、ふるえる
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