絆を求めて/肥前の詩人
こうず まさみ
里山を歩いていると
南の方から 登ってくる父子がいる
走っているのは 中学生だろうか
自転車に乗っているのは
父親である
自転車を漕ぎながら
ときどき 励ましているのか
追い越し間際
少年のほうから
こんにちわ と 声かけられた
川の土手近くの空き地で
バットを持った少年が
素振りの練習をしている
離れた場所で 父親が見守っている
ときどき 打つときの構えや
腰の廻し方などを 指導している
言われた少年は
頷きながら 素振りに余念がない
週休二日制が始まって視られる風景である
このありふれた景色の中に
少年たちの未来が 視えてくる
父親と体験した時間が積み重なって
命の大切さを
無言のうちに掴み取る
あの父子たちは
今年もあの場所で練習しているだろうか
そういえば
荒れていた土山にも
びっしり咲いた菜の花が
仄かな香りを贈っていた
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