遺灰/前田ふむふむ
る空に鮮やかに散らしている。
あなたが愛した海の透明な煌めきで
ほどいた遺灰を、手に取り上げて、
わたしの荒野に咲く、枯れている水仙の花に注いでみれば、
閉じられているあなたの無音の楽章の音階が
満ちるように、孤独な船上の甲板に押し寄せて
やがて、立ち上がる新月の潤沢な皮膚を
切り裂いてゆくだろう。
わたしは、あなたと過ごした豊穣な歳月を
海原に塗した遺灰のやわらかい重さで、
優しく推し量りながら――。
落葉のように降り注ぐあなたの足跡が、
号哭の雨を浴びて――、
さざめく波を掻き集めて、
追憶の海原に舞っていく。
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