遺灰/前田ふむふむ
海の窓に一面咲き誇る、
世代の階段を降ろしているひかりの樹木が、
紺碧の空の濃度のなかを降りそそぐ。
ひかりは、やがて、平坦に引きわけた、
一般という名の岸のなかに、染まってゆき、
見えない声の散らばる個性たちと戯れて、
わたしを強い草の高まりから壊し続けている。
経度を上げる航海――失われたものを辿る、
たぎる海風を飲み干して。
あさく勇み立つ、呼びかける遠い名前――
浮かび上がる、すすり泣く記憶。
想い出は、切り落とされて、
顔の無い液状の砂塵のように果実を閉じている。
答える暗い声――。
霞みを湛える視界の勾配から、
屈折する日常が滑り出す瞬間に、
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