街/葉leaf
る。
道沿いに張られた絹糸を鳴らして人がほぐれるとき、街はしずかに輪郭をやわらげる。手の一振りごとにひろがる気流の刃先に、人はもはや街を描かない。けれども、人は街の表面をさがしているはずだ。街の表面はつみびとの肌でできた皮膜であり、建築や舗石の肌を映し、街の粒子を降らせている。「人と街とが合わさるとき、俺の視覚は街へとながれ込む。氷の繊維にもぐり込み、俺は人々に指先をあたえる。」例えばジドウシャの窓を覆う街の表面は、すばやく自らを脱ぎまた自らを着込む。人の視線はこの運動によりたわめられ、世界に血を通すことしかできない。
「俺は街の表面から人々をけずり取り、幾重にも引かれた街の軌道からはずれてゆく人の波を嚥下する。俺は臓器のめくれを味わおうと一次元の舌になるが、臓器のめぐらす林の曲線に巻きつかれて、五次元の船板に戻される。俺は街の裏側のさらに裏側で、鋭く重い斜線の束を街の中枢に癒合させる。俺は街に棄てられた首の類から、街の粒子を生産し、精産し、生散する。街が俺の裏側へと回帰するまでは、俺は街の軌道をひときわ寒い方角へと導かなければならない。」
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