*僕たちは声を殺して手をつなぐ*/かおる
好きだと言った僕に
君が恥ずかしそうにうなずいた
門限を気にしながらのはじめてのデート
なかなか さよならと言えやしなかった
沈む夕日があい色の空を薔薇色に変え
見つめる君の頬も染まっていった
子供を亡くし哀しみに暮れる君の
頬を伝う涙を数える事しかできず
ごめんと呟いたあとの君の手は優しくて
すり切れていく言葉なんかで右往左往しても
愛はたやすく飼いならせず
見失うのはあっという間で
繋いだはずのその手を
振りほどいてしまったのは
しがらみという重さのせいだったのか
たくさんの朝が来て夜になり
重ねた肌の温もりよりも
信じられたのはやっぱり
言い訳ばかりがうまくなる僕の手を
頼りなく零れていく言葉はいらない
あしたの転がる方向も解らないけど
繋いだその手を離さずにいるから
もういちど、一緒に歩いていこう
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