205号室にて/.
降り続く5月の雨のにおいに
そのアパートの住人は気付かないふりをしている
僕は僕であって欲しかった
少なくとも鏡の前では或いは
君や君以外の誰かの瞳に投影される僕の影ですら
既に僕ではないと感じていた
だから僕は君が感じている手の感覚やにおいが
僕であることを願おうとしたのでしょうかね
雨は決してやむことは無い
いや、いつかはやむのだろう
その瞬間を待ちわびていたのだろうか
洗いたてのシャツが白い眼をしながら乾くのを待っている
揺れる電車の音
例えば赤いシャベルでお城を作って遊ぶ子ども達が
幼い頃の彼等だったとして
それをこの眼で確かめるこ
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