深呼吸して眠ればいいよ。/夕凪ここあ
 
外ではもう夜が始まっていました。

部屋の中に滑り込んで来た夜に
気づかないでいると昨日から抜け出せなくなるようで、私は
決まってひとりベッドに腰掛け
何色ともわからないカーテンを手繰り寄せます。

今日はとっくに終わってしまったよ

と窓の外から声が、
それは透明で淡い光を纏った月でした。

私の耳にはもう月以外の何かは聞こえません、
あなたの声も、私の言葉も、今はもう。

あぁ、あなたはもうここにはいないのですね

淡い光はそれはそれは温かで
まるであなたに抱かれているようなのです。

私は急にひとりきりが哀しくなって
胸の前でかたく、両手を握りあなた
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