泡沫夢幻/蛙の子
僕にはどうしても叶えたい夢があった。
切望して切望して止まない夢があった。
「はやく、大人になりたい。」
僕の口癖だったんだ。
小さな頃
大人になったら「望む自分」になれるって信じて疑わなかったよ。
たくさん、たくさん、なりたいものは色々あったんだ。
今考えると無謀だなって思うものにだって、なれるって信じてたさ。
僕の前には色んな『希望』が、目の前に転がっていたはずだ。
そして僕はその『希望』を手にしたはずだ。
1つじゃなくて、たくさん。たくさん。
なのに。
なのに。
僕の手にある『希望』は全て音を立てて壊れた。
あんなに沢山あったのに、もう転がっているものは
『現実』ばかり。
僕は夢中になって『現実』に手を伸ばす。
僅かな『希望』を信じて手を伸ばす。
『希望』は無残に打ち砕かれる。
僕にはどうしても叶えたい夢があった。
切望して切望して止まない夢があった。
「はやく、大人になりたい。」
僕の口癖だったんだ。
僕は今、夢の見方を忘れてしまった。
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