リラの咲く頃/クリ
 
想を抱いたりもできるのだが心の底のほうでは「リラの咲くころ」は常に過去であったし過去でありつづけることは充分に理解しているしそれが非常に悲しいというわけでもなくまるで「動悸」くらいに心臓がかすかに痛むだけなのだがライラックの葉はちょうどそんな心臓の形をしていてだから「カンフルだ」とでも言わんばかりの気合いを込めた人差し指でその心臓型をデコピンの要領で弾いてみたりはするものの自分自身への「愛の鞭」としてのデコピンなのであり初恋の少女と淋しげなランチっ娘に対するのと同じようにどうしようもない社長へも愛情を注ぐべきでありちゃんとゴミの分別をしないマンションの住人にも等しく優しくしなければいけないのだと強
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