夜明けの疾走/たもつ
 
夜明けの街を
一台のインクジェットプリンターが
走り抜けていく

どこからか受信した文字のようなものを
ありったけの紙に印刷しながら
おそらくそれは全力で
疾走していく

雨上がりなので転ばないだろうか
そのことばかりが気になって
電話をすると

まだ眠っていた
死んだトミナガさんの
家族を起こしてしまった
泣きたいときは好きなだけ泣いていいのだ、と
言ってくれた




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