海の魔女/暗闇れもん
相手が自分を好きかなんてどうしたら分かるのでしょう
人魚姫に足と運命をあげ
引き換えに声を奪ったあくどい魔女の子孫に聞いてみても
私の歌う声は飛ぶ鳥さえも落としてしまうので
結構よと言われてしまいました
魔女が留守のときにそっと忍び込み
髑髏が入った年代物の木の机の引き出しに
すみれ色の手帳を見つけました
それは恋をしたものにしか開かない魔法と
魔女の涙で出来ているようでした
触れることさえ戸惑うくらいの
お菓子の家にもなかった甘く苦しい恋のお話
白雪姫の母からもらった林檎を齧り
海で魔女がまだ
年頃の乙女だった頃
恋をしました
身分違いの恋で
話しかけることさえ出来ないまま
年月は流れ
毎日変わらない思いを秘めたまま
そっとまとわりつく泡にまで嫉妬するくらいに
叶わなかった魔女のすみれ色の恋
身分違いの恋を叶える為に作られた魔法の薬
人魚姫に渡した後
魔女は日記を撫で
余った薬を飲み干し
海の泡となったのです
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