はじまりと岐/
木立 悟
野をむしる火は
小さく大勢のものにかき消され
煙もにおいもやがて去り
もうここには誰も来ない
水に映るものもない
よどみの水草の芽
土くれの幼い虫
影を持たずに
大きくうねり
地平をかすめ
流れを覆い
貫く熱
空に倒れる
雲の柱
黒と金の日
生まれたばかりの水をすくう
影を隔てる影を切り
星へと落ちる樹の種をまく
手のひらとしずくと
火から分かれ進みゆくものが
豊かな夜を迎えられるように
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