夜と応え/木立 悟
 



花に覆われた三つの岩が
波のように重なったまま
夕陽のなかでまたたいている
荒地と同じかたちの雲が
荒地と同じ光にざわめく


闇の内に闇の葉があり
閉じたまぶたをはざまに浮かべる
ひとつの指がまぶたを動き
眼球のかたちを確かめている
うすい緑とうすい金が
まぶたの奥から指に応える


左目にぶつかり
砕けた夜の
翅だけが頬にしがみつき
朝までずっとはばたいている
さらに夜まではばたいている


かたちなく
声なく
幾度も応える
燃え尽きたはずの手が
視界の端に在りつづけ
光と同じものとなり
翅の模様を土に映す


金と緑に
うすく点る指先が
閉じたまぶたと三角を成し
葉と闇の境をなぞり
岩と花の流れの行方
雲と荒地の交わす声
止むことのない応えを照らす










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