なにもない/山崎 風雅
この空間を
時間が静かな音をたてて
崩れていく
なにもない
なにもない
僕は身体が空になり
想念だけの存在になる
ただ想うのは
月を追いかけることだけ
追いかけても追いかけても
月には届かない
緑がその勢力を伸ばしている
部屋の中まで忍び込んでくる
大切な思い出
悲しい出来事
なにもない
なにもない
ここからが出発だ
月明かりが窓の外から
僕のことを覗き込んでいる
だからって
なにもない
なにもない
音がない
色がない
香りがない
光りがない
あるのは
僕の想いだけ
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