アモルファス、ピンクサーモン/カンチェルスキス
けてるみたいだ」
「タモリがそうだよ」とおれは言った。「彼は、昼間あんなにはしゃいでるが、実は、危険な男だよ」
「危険も、慣れてくれば安全だよ」と男。
「そうかもしれない、ただ安全という意識が無意識にまで到達する頃には、逆に危険そのものになってるものだ」
おれは言った。腕時計を見た。腕時計はしない主義だ。たぶん、夜の時間帯のいずれかの時間帯だった。
男は目の前というより、目そのものに集う蝉やカブトムシやクワガタを両手で追い払った。そのとき、タラバ蟹が飛んでゆくのをおれは見た。それがいたのだ。暗闇は何でも隠してしまうものだ。
「やっと、よく見えるようになった。ん?」
タラバ蟹の足
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