黒点の中心部に焼きついた笑顔を見たい/松本 卓也
無意味な夜更かしの後に
明けた朝の風を吸い込んでも
昨日の残りを埋めきれていない
事実だけが胸に残っている
始業と同時に終業を待ち
帰宅と同時に無限を願い
眠りの直後に目覚ましが鳴り
昨日の僕が言い訳をはじめた
大抵は自己嫌悪の戯言だけど
時々は他人に責任をなすりつけて
自分だけが不幸だと思い込むのを
楽しんだりもしてるんだ
今日は雲一つ無い快晴で
山の天辺に聳える鉄塔も見える
屋上で二本目の煙草を吸いながら
三分後に辟易する僕も居て
最近は特に圧し掛かる自問
何の為に誰の為に金の為に
目的は生存と言う名の妥協だけ
豊かな人生なんて望んでない
底辺に結論を置き去りにして
空っぽの青空に手をかざして
少々元気が足りない太陽の
黒点を見極めようと目を凝らす
何も見えなくてもいい
瞬間を切り出した影絵の向こうで
僕が昔どんな顔で笑っていたか
思い出したいだけなのだから
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