朝起きて無題/たもつ
 

本に支障をきたしたので
それはもう本ではない
ページは断崖の形となり
かつて本であったものは
自らの中に身投げをする
けれど羽の形ばかりが
空に飛んでいってしまう

 *

体育館の薄皮をむく
そのための目がある
うち上げられた無数のヒグラシの亡骸に
薄く陽光があたっている
かなな
かようにして
耳は海へと続く

 *

眼鏡の匂いを思い出す日がある
まだ眼鏡などかけたことないのに
朝起きて触れるものに触る
それから呼吸の真似をしてみる
うまくなったね
大人にほめられた日が
かつてあった

 *



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