私生児/石畑由紀子
んな私を知ることなくあなたはあの日、戸籍
上の夫ある立場でタケシ君の母を見下し、タケシ君を見下した。鳴呼、母よ、
私はあなたを母としてこの上なく愛しているしあなたも私を愛していること
を私は身をもって感じている、ただあの時の一言をいつまでも咀嚼できずに
いる私をあなたは爪の先ほども感じていないのでしょう。母よ、幼き私はあ
の日あなたに汚れ多き大人の見解を見ました。嫡出という呪縛の末の。シセ
イジ、私生児、正式名称は私生子。考えようによっては私だってあなたとあ
なたの夫の「私」的な営みによって「生」まれた「子」供なのですよ。
望んでか望まれてか
仕組んでか仕組まれてか
遊んでか遊ばれてか
騙してか騙されてか のち
知ってか知らぬか
今日も女たちの子宮の中で私生子は細胞分裂を続ける
是も非もない世界で三十八億年の旅をしながら
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