そんなオレンジ/山本リョータ
昨日はオレンジの匂いのする君の部屋を出ると見えたいっぱいのコンクリートを僕は何も考えないことでやり過ごした。
僕の頭中いっぱいの僕でさえよくわかっていないものは君の部屋のオレンジの匂いに少し似ているなぁと思っているうちに結局帰る場所は君の部屋なのだと気づいて少し悲しくなった。
ブーメランのように戻ってきた僕を君は爆笑と共に迎え入れて「やっぱりね」と呟いたのを僕は絶対に忘れないと思う。
僕は君に読まれてしまうほど落ちてしまったんだろうか。
悔しさと情けなさで泣きそうな僕を君はあの細い腕で切なく慰めてくれてなんだか死んでしまいそうだった。
オレンジと君を吸い込んで僕の中で消化してしまったらど
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)