朱夏の鳥/佐々宝砂
 
午後の熱に散乱する
私の欠片を
拾い集めているひとがいる

ポケットのなかの綿くずのような
灰色の球が
ふよふよと窓から入ってくる

これが夏だったろうか
こんなのが夏だったのだろうか

そのひとはそしらぬ顔で
私の欠片と
灰色の球を
混ぜあわせてしまう

悲鳴をあげようにも
私ののどは
もうすっかり錆びていて

窓のそと
濃みどりの榎の葉陰
恋を唄わぬ朱夏の鳥がさわぐ

戻る   Point(4)