朱夏の鳥/
佐々宝砂
午後の熱に散乱する
私の欠片を
拾い集めているひとがいる
ポケットのなかの綿くずのような
灰色の球が
ふよふよと窓から入ってくる
これが夏だったろうか
こんなのが夏だったのだろうか
そのひとはそしらぬ顔で
私の欠片と
灰色の球を
混ぜあわせてしまう
悲鳴をあげようにも
私ののどは
もうすっかり錆びていて
窓のそと
濃みどりの榎の葉陰
恋を唄わぬ朱夏の鳥がさわぐ
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