風の名前/佐々宝砂
 
青いタイルのベランダに降り積もる羽蟻の死骸
雨のない夏 睡魔に襲われる夕刻

ゆっくりと旋回しながら
飛行少年が落ちてくる

脚を尖らせて私は歩く

あなたはコンパスで地球を計り
風の名前を知ったという

私は微笑んで
冷えた麦茶をあなたにあげた

それから

汗だくの飛行少年を抱きしめて
もつれた螺旋をほどいてゆく

夏が続く限り 私は目覚めていなくてはならない
あなたが 風の名前を教えてくれないとしても



戻る   Point(7)