風の名前/
佐々宝砂
青いタイルのベランダに降り積もる羽蟻の死骸
雨のない夏 睡魔に襲われる夕刻
ゆっくりと旋回しながら
飛行少年が落ちてくる
脚を尖らせて私は歩く
あなたはコンパスで地球を計り
風の名前を知ったという
私は微笑んで
冷えた麦茶をあなたにあげた
それから
汗だくの飛行少年を抱きしめて
もつれた螺旋をほどいてゆく
夏が続く限り 私は目覚めていなくてはならない
あなたが 風の名前を教えてくれないとしても
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