近代詩再読 立原道造/岡部淳太郎
 
=ばとうくわんぜおん}の叢(くさむら)に 私たちは生れてはじめて言葉をなくして立つてゐた

(「夏の旅 ? 村はづれの歌」)}

 これは全部で7章まである「夏の旅」の書き出し「? 村はづれの歌」である。この詩の中で詩人は「みすぼらしい故里の町」へと旅をする。途中、「古びて黒い家……そこの庭に/繋がれてある老いた山羊」(「? 山羊に寄せて」)についてうたったり、「村中でたつたひとつの水車小屋」(「? 田舎歌」)についてうたったりする。そして、「? 憩ひ――I・Tへの私信」で、ひとつの高みに達する。それは詩の中で描かれた旅の高みであると同時に、この詩そのものの高みでもある。



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