夏の銘/10010
 
傘が僕を置き忘れる。深く。
雨の良き理解者である君は
四季と死期を数えて日暮れ待つ

ふたりして迷い込んだ夏は
手を繋いでいるにも
汗ばんでいるにも
息をしているにも
余りにじれったく

中京区新京極四条燃ル
僕は目隠しして君に花火を見せない

『胡蝶蘭。』
『ご冗談。』


ゆらむ、夏の火。僕の非。君の緋。


中京区新京極四条燃ル
僕は目隠しして君に花火を見せない
せめて

『ゆらめば?』
『ゆらゆらよ』


もはや、夏の悲。僕の妃。君の碑。


置き忘れる。夏、深く。
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