夜(雨と王国)/木立 悟
夜の白が海へ飛び去り
やがて来る雨が冷たく香る
半ば空へと持ち上げられながら
ゆらめくように船は消えてゆく
長い時間に削りとられた
狭い砂浜へと夜は帰る
土に臥して
道を描く子
追う心が
あおぐ空が
灰から青へとはばたくとき
光の顔
金の角
呼ぶものに応え
道を歩むものの胴を抱く
低い草木と
蜘蛛の王国
夜の木と 風と
水を照らす雲を過ぎ
壊れながら咲く
ひとつの花を抱く
夜の終わりへと
腕をひろげればかがやく胸
羽のにおいに
夜明けの矢に目を閉じ
落ちてくる霧のかけらに沈む
ぶつかりあうかけらの音を聴く
からだのなかで
かけらが雨に変わるのを見る
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