ひなげしの群れ咲く野において/鏡文字
2人の営業が
毎月風の強い日になると
適当な場所を見つけ出して
俺たちを誘いに来る
各々フロイトやら バロウズやら
解剖学者ドン・ベサリウスやらの
ボール紙で作った仮面をつけて
酒瓶を片手に
三々五々集り来る
余興はいつも同じで
1・2・3
1はflying camel
2はthunder through Papa
3はpoppy on ass
負けた奴が罰ゲーム
それはもちろんウィリアム・テルの的だ
頭にグラスを逆さにかぶせて
1・2・3
俺はバーボンが好き
クレッシェンドは辛めの赤ワインが好き
ル・コンはスコッチが好き
そうして俺は
お前達が死ぬほど好きだ
1・2・3
全部で20人はいただろう
年末近くになると
5・6名程度に減ってはいるが
年始にはまた営業が
新参者を連れて
ニヤニヤしながら俺たちに告げに来る
「場所が決まったよ
これが新しい的
1・2・3」
アン・ブーリンの仮面をつけた
女の前歯が美しい
狙いを定めて 1・2・3
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