夜(光と声)/木立 悟
 



ひな鳥の声が
どこまでもまっすぐにのびてゆく
こだまも 霧も
親鳥も知らずに
崖の上の森から
次々と旅立ってゆく



淡く灰色に点滅しながら
世界は世界から離れてゆく
水を閉じ込めた黒い鉱が
光の手のなかでかがやいている
光と波の混ぜもののように
渚に立ち
夜を見つめる目のように
ゆらめいている



とまどい うたがい
あらがい
やがて 受け入れる
知るものと
知ることのないものとの間に
翼の花の列がつづく
ひな鳥の声を受けとる耳が
軋みに溺れることのない耳が
失われた光の代価となり
世界を分ける花の芯へと
羽の蜜へと落ちてゆく











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