雨音に相応しい詩などみつからないのだから/松本 卓也
 
風向きは悪くないから
こんな酷い雨でも
窓を開けていられる

国道に何台かの車が
時折行き交っている
その音さえ掻き消すほど

雨足が強くなるほど
1DKの部屋に響くのは
天窓を叩く雨音だけに
収束していくようだ

いつもは耳に響く
秒針の音さえも
流れ降る音に混じり
やがて和音となって

一人で眠るには
少し広すぎるベッドで
水に打たれるイメージ
独りきりで弄びながら

雨音が奏でる鎮魂の調べに
心を静められるのなら
相応しい言葉が無くても

どうかこの夜だけでも
夢の無い眠りに沈んで
安らぐ事ができますよう

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