[ 海夜の浜辺 ]/渕崎。
 
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寄せては返す
小波は
酷くせつなく
身を切りて
ひとりぽっちで
歩く女の
白い小足を
浚ってく

潮を含みて
吹く風は
生なまぬるく
身を舐めて
ひとりぽっちで
歩く女の
昏い首筋を
絡めてく

ぽっかり浮かんだ
白い月は
まぁるくぼんやり
滲んでは
寂しい女の長影を
海夜の浜辺に
落としゆく

嗚呼、寂しきは夜の浜辺かそれとも女か
小波啼いて風も啼く
ひとりぽっちの女は静かに
さくりさくりと砂浜に
足跡だけを残しゆく

落とした
海夜の
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