うた/セイミー
けさせる
恋をすると言葉の意味がわからなくなる
というけれど
ちがうと思うなあ
言葉の裏のたましいみたいなもの
白い影ぼうしがのようなものが
ほんとうのことを
伝えてくれるようで
校舎の裏に誰にも気付かれないように
小さな落書きをして
その落書きは
いつか君に見つかって
ロンリー思考のコケモモみたいな
ぼくの心臓に
未だに君が残っているのに
森については
そんなに多くのことを話さなかったっけ
ログハウスもついに組み立てられなかった
釘だけが数本残されて
リスやクマゲラが
忘れたころに通っていって
でも
その組み残された木々の
何気ない傾きに
うたはいつも用意されていて
いつもいつも
そうやって
うたに寄りかかって
ときには嘘を放り投げ
ぼくは歩いていたのかもしれない
今日もまた
寂しそうに
短い地下道を震わせている
うたというたましいのてのひらに
淡い思い出を重ねて
しょうべんくさい街のはじっこを
我が家に向かって歩いている
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