「蝶」/広川 孝治
た
自由と幸福の象徴のような翼を音もなく羽ばたかせ
思う様に生きている蝶がどうしても欲しかった
しかし、僕は芋虫だ
やがて蝶になるために
さなぎにならないといけない
そこで全身をどろどろに溶かし作り変える
それほどまでの痛みと苦しみ
味わう勇気がもてなくて
今でも僕は芋虫だ
きっと一生芋虫だ
それでも僕は
あの庭先で飛び回る蝶がずっと欲しかった
およそこの世で受けられる歓喜を全身に漲らせ
自由と幸福の象徴のような翼を音もなく羽ばたかせ
踊るように動き回る蝶が
狂おしいほど妬ましく
ずっとずっと欲しかったのだ
これからもずっとずっと、蝶になりたい気持ちを胸に
僕は芋虫として地をはいずるのだろう
ずっと、ずっと。
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