カレーショップであなたに愛を告りたかった/恋月 ぴの
とか
食べた後ふたりでどこへ行こうかとか
ふたりの人生をこれからどうしようかとか
いつまでも500円玉を握り締めて悩んでいた
ハタから見ればどんなにつまらなく思えることでも
あなたはいつでも真剣に悩んでいた
一生懸命何かの答えを導き出そうと悩んでいた
わたしはそんなあなたが大好きで
難しそうな横顔のあなたが大好きで
「たまごカレーの黄身よりも君がすき」
「カツカレーのカツにわたしの思いは勝つ」
つまらない冗談であなたを笑わせたかった
たまには眉間のシワを忘れさせたかった
カレーライスはわたしたちの思い出
カレーライスはわたしの生きがい
そんなカレーライスにわたしは溺れすぎていた
告りたかったわたしの愛はカレールーのとろみとなって
調子に乗って入れすぎた香辛料の辛味は
あなたにとって辛すぎたことなどお構いなしだった
「ねえマスター、おひやのお代わりお願いね」
なんで激カラなんて選んでしまったんだろう
ひとりで食べるカレーライスはいつもと違う味がする
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